おっさんは、ジャンダルムに行きたいらしいのだ。
なにかの TV 番組で一瞬映ったジャンダルム。黒々とそそり立つゴツい峰の天辺に、マッチ棒のように小さな人の姿があった。もやの中、逆光を浴び、神秘的で心をつかむ風景だった。そして、「ジャンダルム」という野生的でありながら優雅でもあるようなその言葉の響き・・・。(ジャンヌ・ダルクを連想するから?) 思わず何度もつぶやいてみたくなる。「ジャンダルム、ジャンダルム・・・」。
穂高岳から奥穂高岳へ向かう縦走路にあるジャンダルム(gens d'armes)。フランス語で「憲兵」という意味らしい。山岳用語では「前衛峰」を指すとのこと (穂高以外にもジャンダルムは存在します)。「技術だけでなく、気力と体力ともに充実したクライマーにのみ挑戦することが許される登山路」なのである。
私は自分でその風景を見ることははなから諦めている。たしかに天辺では特別な気分を味わえるでしょう。人生観変るかもしれないというのも納得。しかしそこまでの道程が過酷過ぎる。延々と続く傾斜のきつい岩稜の急登と急降下、岩に貼り付くように進むトラバース。私の人よりちょっと (ちょっと・・・) 不注意で気が動転しやすいところが、そこでは容易に取り返しのつかない大惨事に結びついてしまうことだろう。
しかしおっさんは一度決めたら着々と目標に向かって突き進む男。早速、湯河原で開催された岩場講習に出かけてゆき、インストラクターさんから「ジャンダルム、行けますよ」と太鼓判を押してもらいご満悦で帰ってきた。
岩場講習。
なんかこんなレスキュー隊のようなことをしてきたらしい。
(私は一緒に行っていないので、実際どんな具合になっているのかよくわからない。)
次は DVD でイメージ・トレーニング。
山と渓谷社 「アドバンス山岳ガイド 西穂・奥穂縦走」
モデルの若い女性アルピニストたちは、見ているだけで背筋が凍りつくような場所を嬉々として登ってゆきます。
なんだってあんな命懸けなところに行きたいのか?それは山ヤのロマンなんなんだかどうなんだか?
当初の意気込みのまま 7 月に開催されるガイド付きツアーに申し込んだおっさん。やはりいきなり単独行は無謀よね・・・。
無事に帰ってきてくれなきゃ困るよ・・・。私 1 人でどうやってバイソンのりこの天然に立ち向かえば良いのさ。
で、君らは何のトレーニングしてんの?(行く気なのか? ジャンダルム・・・)
「ハシモトがリュックを虐待してるよ!」とおっさんに言うと、「彼らはザイルパートナーなんだ」という返事だった。
0 件のコメント:
新しいコメントは書き込めません。