2009年5月6日水曜日

四万十川をくまは流れる

4 月 25 日

悪天候は四国から関東に向けてやってきた。まさにその朝、羽田から高知に向けて飛び立ったくまたび一行。視界不良のため、場合によっては大阪伊丹空港に着陸するか、羽田に引き返すこともあるという条件付きのフライトでしたが、20 分ほど遅れただけで無事に高知龍馬空港に到着できました。やれやれ。大阪に降ろされちゃったら、そこからどうやって高知までやってきたら良いものか、想像もつかないところ。

空港からバスに乗って高知駅へ。薄曇の空は次第に明るさを増し、天気はにわかに回復。

RIMG0025 「高知じゃきに」

RIMG0026 やって来たのは思いがけず「アンパンマン号」であった。車窓から眺めていると、子供たちが手を振ってくれる、楽しい列車です。終点の中村駅まで向かいます。

RIMG0031 高知駅でおっさんが購入した「かつおたたき弁当」。このお弁当をたいらげたおっさんは、すっかりにんにく臭くなってしまった。

中村駅で、ガイドの U さんにピックアップしてもらい、四万十川そばのキャンプ場「かわらっこ」へ。今回のくまたびは、くまも愛用する某アウトドア・ブランド主催の 3 日間に渡る四万十川でのキャンプ + カヤック・ツアーです。このツアーに参加を決めた理由の 1 つは、憧れの四万十川を下ってみたい、ということ。そして、もう 1 つが、最近おっさんが山でのテント泊に意欲を見せはじめていることにある。先走って装備一式を揃える前に、一度テントでの寝泊りを体験してみてはどうだろう、ということになりまして。

キャンプ場で、主に料理を担当してくださった U さんの奥さんと、愛犬ミニチュア・ダックスフンドのマメちゃん、もう一組の参加者 Y さんご夫婦と合流。Y さんたちは、何度も同じツアーに参加されているそうで、U さんとも顔なじみ。ご自宅にもカヌーをお持ちで、近くの川へ漕ぎ出すというベテランさんだ。そしてなんと、2 頭のカヌー・ドック連れ。ご夫婦もわんちゃんたち (バセット・ハウンド) も、自前のライフ・ジャケットに身をつつみ、準備万端、颯爽としている。私たちも、あたふたと着替えて (普段山登りで着用している速乾性のシャツとズボン)、ワゴンで四万十川上流の川原へ向かう。

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なんと、自分たちでカヤックを組み立てるのだ!アルフェックという種類のカヤックです。ガイドさんの指示に従い(というかほとんどガイドさんが組み立ててくれたようなものだけど)鉄骨を伸ばしたり曲げたりするうちに・・・あら不思議、カヤックの骨格が整いました。

P4250008 座席を固定して、

P4250010 カバーで包み込んで

完成です。わぁー、すごい。

P4250013 それでは、漕ぎ出してみましょう。

Y さんご夫婦とカヌー犬ハリー君(息子; 25kg!) は慣れた様子で水を切って進む。カヌー犬ジャンヌちゃん (母) はガイドさんと一緒の艇。

P4260034 ジャンヌ嬢、ベテランの風格。師匠と呼ばせてください!

実は私にはファンタジーがある。天気の良い穏やかな水面を、カヌー(もしくはカヤック)で漂う。舳先にはカヌー犬・・・。

しかし現実は、厳しい。開始 30 分足らずで四万十川の洗礼を受けるどん臭さ満開の我々なのであった。その決定的な瞬間を、Y さんご主人が偶然撮影してくれていました。

カヤック上で余裕のハリー君、流される私たちを呆れて眺めているよ。

はじめて沈してみて、わかったこと。

1. 沈しても、死なない。(たぶん。)

2. 沈する可能性はいつだってある。

最初はびっくりして、こんなに簡単にひっくり返ってしまった自分に腹が立った。救命胴衣を着ているので水に落ちても沈むことはない。しかし流れがあるので、泳ぎにくくはある。川で泳いだことがないので、すこし焦った。しかも思ったより水が深いのね・・・。私は陸地にたどり着くのに必死。転覆したカヤックを岸につけるのはおっさんとガイドさんに任せてしまった。

このとき、リュックとハシモトは私が首から提げていた防水パックの中。でも締めが若干甘かったらしく、すこし水が入り込んで案の定、絵の具がすこし溶けてしまった。樹脂粘土で表面を固め、copic というフィギュア用のペンで顔を描き、アクリル絵の具で色を上塗りしたのだけれど、ハシモトの肩には刺青のような緑の汚れが、リュックの顔には無精髭のような黒ずみが出てしまった~。リュックはきれいに作り直したばかりだったのになぁー・・・。

結局、濡れ鼠の私たちが風邪をひいてはならぬということで、その日は切り上げて帰還することになり、Y さんご夫妻にはとっても迷惑をかけてしまう。へこむー。

ちなみに、開始直後の練習の段階で沈した私たちは、過去の最短沈記録を塗り替えたそうです。その日の夕食後、Y さんが捕らえてくれたこの絶妙の瞬間を、Y さん持参の PC で見せていただいた。カヌー名手である U さんの奥さんによると、原因は私のパドルが流れに取られたことにあるようです。おっさんのせいにしてしまおうと思っていたのだけれども。ほんと申し訳ない・・・。

かわらっこのキャンプ場には、3 分 100 円のシャワーが完備されており、さっそく使わせて貰いにゆきました。しかしいくら待っても暖かい水が出ないー。(この日は利用者が私たちだけで、そんなに早く帰ってくるとは誰も思わなかったらしく、まだガスが点火されていなかったようです。後でお金を返してくださいました。)仕方がないので十分に温まることなく乾いた服に着替える。しかし、冷え切っていた身体には乾いた服を着るだけで温かくて心地良い。洗濯機、乾燥機もあるので、濡れた衣類を洗って乾かすこともできました。今時のキャンプは、こんなに便利なのかー。

そしてテントを建てる。(ほとんど、ガイドさんが。)

RIMG0034「これは ぼくらのテント」

レンタルのコールマンのテント。結構大きめです。最初は参加者が男女別に分かれて利用する予定だったそうですが、今回は 2 組の夫婦がそれぞれ 1 つのテントを使わせてもらえました。RIMG0033

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ガイドの U さんちのマメちゃん。ものすごくキュート。ものすごくフレンドリー。出遭ってすぐに寝転がってお腹を見せてくれた。(果たしてそこまでフレンドリーでよいのか?) 顔も性格も、なんとなく姪っ子のゆうちゃん(人間)に似ていた。

U さんご夫婦は、休むことなくきびきびと立ち働いて、

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こんなすごい石焼ビビンバを作ってくれました。キャンプに来て、普段より豪華な食事がとれるとは・・・。

おなかいっぱいおいしい食事をいただき、U さんや Y さんのお話をうかがいつつ、楽しい時間を過ごしました。

夜になると風が出て、かなり冷え込んでくる。旅行前日に U さんから、「夜は冷えるので防寒具を持ってきてください」と連絡をいただき、半信半疑で持ってきたダウン・ジャケットが役に立った。(フリースは水没して濡らしてしまったし。)しかし、日焼け止めに水着にダウンジャケットとは、季節感がまったくわからない旅行ですなー。

4 月 26 日

晴天、だけど暴風。

夜中、ごうごうと風が吹き、やっぱり屋外で寝ると違うものなのねと思っていたけれども、その日は特別に荒れた模様。眠っていると足が冷えて、Y さんの奥さんが分けてくださったホットカイロがとても有難かったー。

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川の上を浮遊するこいのぼりも風で煽られまくっていました。

朝食を食べていると、地元のおじさんが通りかかり「よく来たねー。こんな 11 月並みの気候のときに」とにこやかに話しかけてこられた。寒いと思ったら、そんなですか!普段、5 月ならば川で泳いでも気持ちいいくらいの日もあるらしい。わたし、実は雨女。この悪天候、わたしたちが連れてきたような気さえしてくる・・・。

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テントがへこたれる勢いの暴風。寒いし危険かもしれないのでしばらく様子を見ましょう、ということになり、天候待ちの間、「バームクーヘンを作りませんか」とガイドの U さんが提案されました。

・・・ つくれるんですか?

銀紙を巻いた棒に、ホットケーキ・ミックスで作った生地をたらして、炭火で焼きます。

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色づいてきたら、

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さらに生地を重ねます。それをひたすら繰り返し、

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こうなるまでに、およそ 2 時間!! バームクーヘンの完成です。

いやー、得がたい経験をしました。これで私 「バームクーヘンを作ったことがありますの」と皆に言うことができます。

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さて、待った甲斐あって風もやや弱まり、お昼ごはんを食べたあとで、再び川に向かいます。前日は練習でしたが、今回は実際に川を下ります。濡れるの覚悟で、しっかり準備しました。くまに至っては、防水パック二重にして完全防備!(そういうときは意外と濡れないもんなんですよとガイドさん。)

最初は緊張していたのですが、水の上を漂う癒し効果からか、だんだん気持ちが穏やかになってゆきます。

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流れが厳しく、鉄の棒が流れ着いていて危ないところは迂回することになり、ちょっと安心。

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気持ちよいです。

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この日は沈下橋まで。

キャンプ場に帰ってシャワーを浴びたり洗濯したりしている間に、U さんご夫妻が用意してくださった夕食は、なんと筍ごはん。

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毎日こんな贅沢させて貰ってよいのかしら。

キャンプにしては相当恵まれているのではないでしょうか。でもしあわせ~。

この日の夜は星がものすごかったです。まさに空中ちりばめた、という感じ。

U さんご夫婦は、テントではなくシュラフに寝ているそうです。シュラフだけでどこにでも行ってしまうらしく、富士山でシュラフで寝たときには、雷が鳴って迫力ありましたよ、などとあっけらかんと申されるのでびっくりしてしまいます。若さとバイタリティーに溢れ、まぶしいのです。シュラフで星を眺めながら寝ることに挑戦してみたい気もしたのですが、冷え性な私はシュラフを二重にしても夜中に冷たい足をシャワーで暖めにゆかねばならないほどの軟弱者・・・。

4 月 27 日

カヤック・ツアー最終日の朝です。

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前日荒れ狂った風が嘘のような、静かな 1 日のはじまり。

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テントで寝るのも最後だね。

この日は特に難所がない穏やかな下りということ。天気も最高で、いうことなし!

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P4270095 もったいないくらい、いい日だねー。

P4270105 ジャンヌちゃんのくつろぎっぷりはすごい。天性のカヌー犬。私も Y さんご夫婦のように腕をみがいて、カヌー犬を連れて川下りができるぐらいになりたいなぁー。(「ぼくたちがいるじゃない!」とリュックとハシモトはふくれっつら。今回は水没という試練に耐えたくまたちは、例によってぼろぼろに・・・。ごめんよ。)

では、くまと一緒に四万十を川下りしてみましょう。

これで、カヤック・ツアーは終了。

最終日のお昼ごはんは、こんなに豪勢。

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ケーキまで!U さんの奥さんは「昨日のバームクーヘンと材料は同じですよ」と笑っておられましたが、屋外でこんなにたくさん素敵な料理を作っていただけて感謝感激でした。

食事が終わって、後片付けを済ますと、名残惜しいけれど、みんなとお別れです。

RIMG0050 「ぼくらもテントしまわなきゃ」

Y さんご夫妻は旅を続け、宮崎まで南下してさらにキャンプするという。ここはまだ旅の序の口なのです。Y さんファミリーのおかげで、犬と一緒の川下りの雰囲気が味わえて、すごーく楽しかった。またいつか、皆さんと川下りしたいなぁー。

中村駅まで送ってくださった U さんご夫妻に別れを告げて、中村から高知へ。ふたたびアンパンマン号で戻ります。

RIMG0056 電車好きの甥っ子に羨ましがられそうだ。

高知駅から路面電車に乗って、宿泊するホテルまで。

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路面電車が走っているって、なんか、いいよね。

一休みしてから、高知では有名なひろめ市場に夕食を食べに出向きました。

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ひろめ市場はフードコートのようなシステムで、バラエティ豊かな屋台形式のお店から、好きなものを頼んで持ち寄り、食べることができます。

真ん中にあるのはなんとうつぼ。はじめて食べた!シュノーケルに行ったときに出会ったあのうつぼのグロテスクな姿を思い浮かべると、敬遠してしまいそうになりますが、Y さんご夫妻から「とてもおいしい」と伺っていたので思い切って食べてみた。そしたらすごくおいしかった。淡白で歯ごたえあり。

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そして高知といえばかつおのたたき。これは塩たたき。香ばしく、肉厚で、絶品です。人生で食べたかつおの中で No1 のおいしさ。さすが本場です。

RIMG0070 「まだ食べるんかい!」

調子に乗って食べ過ぎましたが、好きなだけ選んで食べられてとても楽しい。ひろめ市場、おすすめです。

4 月 28 日

最終日。あとは高知を観光して帰るだけです。

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「板垣死すとも自由は死せず」の板垣退助銅像。その指差す先にはなにがあるんだろ?

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そして高知城を見学に。

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中は資料館みたいになっていて、結構楽しいのです。

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お城のミニチュア模型でテンションが上がる~。

市井のひとびとの姿が生き生きと再現されている。

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「オレ、ここに住みたい」とハシモト。

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天守閣に登って、数分もしないうちに、小学生の集団 (社会科見学中らしい) が元気よく登場。その場を席捲してしまった。中に、私が小学生だったいじめられてそうな、いかにもガキ大将風の少年がいた。小学生の頃って、あんまりいいことなかったよなぁー、などと思いを馳せてしまう。

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小学生に追われるように高知城を退散して、時間を持て余しつつ、高知県立文学館で開催されていた「大町桂月~酒と旅と自然を愛した文人展」を見に行ってしまう。(大町桂月については何も知らなかったにもかかわらず。)

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ポスターが良い感じだったのね。数多くの直筆の書は、漢文であったりあまりに達筆であったりして解読できず・・・。でもとりあえず、桂月の教えに従い、横座りはしないようにしよう!

その後、ふたたびひろめ市場を訪れ、お昼ご飯。

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RIMG0122 うつぼの唐揚げ。おいしかった!

ひろめ市場で見かけたなぞの言葉。

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「たっすいがは、いかん!」って、どゆこと???

あとはふらふらと商店街を抜けてはりまやばしまで歩いた。

RIMG0129「これ、はりまやばし?」

RIMG0131 さて、東京に帰りますか・・・。

「楽しいくまたびだったね」

「おう!四万十川で流されたけどな!」

それもこれも良い思い出になりました・・・。